第六回島田荘司推理小説賞の一次選考通過作の簡単な紹介(1) 馮格『不知山上』

昨日予告した通り、第六回島田荘司推理小説賞の一次選考通過作について、備忘録代わりといってはなんですが、簡単なあらすじ紹介をしてみたいと思います。とりあえず小説賞の意図する作品・作風と、世間での人気と評価が大きく異なる――というのは、いまさらここで述べるまでもないでしょう。二次選考に残ることができなかったからダメな作品、売れない作品ということはないわけで、個人的にも「いま、この作品を日本で出したら大ベストセラーになるんじゃないノ?」というようなものもあったので、そうした点についても簡単なコメントを添えておくつもりです。

というわけで、まず最初は馮格の《不知山上》『知らずの山にて』。以下、ジャケ帯に添えられているあらすじ紹介フウの文章も添えて、この物語と風格について言及していきます。

馮格 《不知山上》『知らずの山にて』
山寺で発生した猟奇連続殺人!

「士」を名乗る人物からの不可解な手紙をきっかけに僧侶たちが次々と陰惨な死を遂げる! 狂人の設計した殺人屋敷での連続事件を見事に解決した杜安とYの二人はふとしたことからこの山寺へと迷い込み、羅刹事件の調査を開始する。現場におかれた天狗や羅刹の面。密室に宙づりにされた屍体と、仏像に隠された血まみれの屍体。それらと過去の殺人との関連は?

そして島田荘司トリック“欲張り”セットで大展開される奇人館での事件の真相がいま語られる! 果たして山寺で発生した羅刹事件の真相を探偵は解くことができるのか?!

『屍人荘の殺人』『元年春之祭』のスマッシュヒットからも明らかな通り、いま日本のミステリファンがもっとも渇望しているのはコード型本格の作品に違いなく(だよネ?)、本作もまたそうした風格を強く前面に押し出した一作ゆえ、日本のミステリ事情に通暁した識者であれば、一読して、「早川から日本語版が刊行されれば大ベストセラー間違いなしッ!」と感じるのではないでしょうか。

そしてまずもって「島田荘司」推理小説賞であるにもかかわらず、「御大の有名トリックはすべていただきッ!」とばかりに御大の長編トリックを大胆不敵にブチ込んでみせた連続殺人の様態には完全に口アングリ。

ちょっと待てよ、水がブワーッとなってアレがアレになるのはアレだし、こう屍体がつり下がってブーンとなるのはアレだし、――と御大ファンであれば既視感ありまくりのトリックが山寺や奇人館に舞台を変えて展開される趣向については、確実に評価が分かれるのではないかと推察されるものの、ここまで島田荘司“欲張りセット”を徹底・透徹してみせた開き直りには感服するしかありません。今回は残念ながら入選こそ逃しましたが、これは日本のミステリ界でのリベンジもあるかもしれないと思わせる力作、――とここまで煽っておけば、大陸のミステリ通の目にとまり、近い将来日本でも刊行されるのではないか、と期待と不安を抱きつつ、これくらいで筆を置き、次の記事では見事入選を果たして弋蘭の『無無明』を取り上げる予定です。

第六回島田荘司推理小説賞の入選作三編が金車文藝中心から発表されました

 

屍人荘の殺人 / 今村 昌弘

元年春之祭 / 陸 秋槎

 

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