第四回島田荘司推理小説賞レポート@台湾(10)

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またまたちょっと間が開いてしまいましたが、前回の続きです。

Q6. 先生の作品はよく映像化されていますよね。今年も映画化もされます。そこで先生にうかがいたいのですが、映像化される作品と純文学作品との最大の違いはどのようなものだとお考えでしょうか(政治大學推研社)。

どこになるんでしょうね。アメリカのドラマと日本とのドラマはまた違っているように思います。私の印象では、テレビドラマっていうのは、やはり家庭の主婦の方々、あるいは女性たち。そういった人たちがチャンネルのヘゲモニーを握っているので、彼女たちに向かって、彼女たちの趣味に合わせてアレンジしているっていう印象は持ちますね。よく言われることは、この作品は女性の皆さんにもアピール、判っていただけるように恋愛的要素を加えましたっていう宣伝文句がよくあります。まあ、これは難しい問題――また日本のミステリー、映画界、映像界、いま変わりつつありますからね。いま断定的なことは言わない方がいいと思います。

Q7. 島田先生は電子書籍の発展について何か考えがありますでしょうか? また電子書籍の特徴を活かした創作を行ってみようと考えたことはありますか?(ミステリ作家・凌徹)

この問題はですね、電子本の可能性ということを思うことがありました。来年の五、六、七月あたりに御手洗さんの『星籠の海』というものが、さっきもいらしていただいていた、佐倉プロデューサーの力によって公開されることになりました。いま撮影は終了し、編集している段階です。そのために年末から御手洗さん関連がたくさん出るんですね。十二月にノベルズの『星籠の海』が出ますし、それから『御手洗潔読本』というものが出ます。これは300枚弱の御手洗の中編の長いものを中心軸にして、御手洗の名言集とか、レオナや石岡君の名言集をつけたり、バイオグラフィーをつけたり、そういったものたちで完成させていこうとしている本です。で、六月に『御手洗潔の推理本』というのが出るんですが、これはかつて書いて埋もれているような作品群、例えば御手洗のお父さんのお話も短編なんですが、こういうものを集めてい発表しようとしている本です。

で、この中にはスウェーデンのウプサラというところにあるウプサラ大学での御手洗さんの様子をハインリッヒという人が書いてくれているという短編があります。ウプサラというのは絵のように美しい街なんですね。で、ウプサラ大学に留学された人のご厚意で、ウプサラ大学の各施設の写真をたくさん提供して頂きました。これが紙の本の場合には、コストが上がってしまうので、まったく紹介出来ないんです。しかし電子本の場合にはいくらでも中に入れられるということがあります。写真だけでなく図面も入れることも出来るし、時には動画だって入れられる可能性がありますね。

これは今朝、こちらの新聞記者の人と話をしていたんですが、ミステリー、本格ミステリーの漫画というものはどういうものなのか、可能性があるのか、といった問題とも通底しますね。謎の性質や、謎解きの効率をビジュアルによって上げることが出来るかもしれませんですね。しかし謎解きのとき、探偵役は多くの言葉を費やすことになってしまいます。だから『星籠の海』では玉木さんという人が御手洗さんをやってくださるんですけれど、脚本を読んであまりに台詞が多いので、マネージャーの女性なんですが、ああ可哀想といっていました。相当、四苦八苦しているようでした。そういうこともありますね。ですから漫画という媒体の場合、ビジュアルの点では効率を上げるということが出来るかもしれませんが、漫画のふきだしは狭いですんですね、言葉が入りづらいということはあります。

まあ、電子本との関わりは私は始めたばかりですので、これに関して特にこれ以上の深い考えはないです。

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