堂々完結。『蠱峯神』の続きなので、宿敵はハッキリしているため、この強敵とどう対峙し、そして隠温羅流一族にまつわる因縁に主人公ちちはどう決着をつけるのか――に焦点が当てられ物語が進んでいくわけですが、前段でイキナリ人死にがあり、これがくだんの因縁に深く関わっている人物でもあったので超吃驚。
ネットで感想をちらっと覗いて見ると、最初から泣きながら読んでいたという人も多く、まさに自分もそのひとりでした。『蠱峯神』で明かされた宿敵の過去を考えればその恨み妬みの深さは底知れずで、シリーズ中最強の怨念ながら、読み進めていくうちに立ちのぼってくるこの宿敵の哀切が涙を誘う展開がとてもイイ。
ヒロイン春菜と仙龍はもとより、教授と生臭坊主、コーイチたちからなるチームが総力戦で挑む後半の曳屋は圧巻で、その過程で明らかにされる壮大な操りに度肝を抜かれ、仙龍危機一髪からヒロイン春菜が果敢に啖呵を切り、彼女の愛と宿敵の欲とが激しく火花を散らす、――というか文字通り火まみれになっての対立シーンは筆舌に尽くしがたいほどスリリング。
壮絶な曳屋が終わったあとに明かされる隠温羅流の因の謎と、宿敵によるあるものの完成を目的とした因果の操りは表裏一体で、時が満ちたときにヒロインの強い愛の発動によってその謎解きが始動するシリーズ全体の仕掛けも素晴らしく、エピローグのほっこりしながらも感動的な幕引きも言うことなし。
自分が眺めているミステリ界隈ではあんまり話題になっていない本作ではありますが、シリーズ類型15万部突破も納得の逸品で、こうして終わってみればもう、本作は絶対に後回しにして第一作『鬼の蔵』から読み進めていくことを強くオススメするよりほかありません。『蠱峯神』と本作で展開される強敵の魂胆と企みは、構想当初から折り込み済みだったのか、それとも途中で作者が思いついたものなのか、――このあたりはどうなのか、ちょっと興味が湧いてくるところはあります。
長野の四季折々を舞台として、異界・信州をも愉しめる本作、ここ最近完結したシリーズものとしてはいの一番にオススメできる逸品といえるのではないでしょうか。超オススメ。