第四回島田荘司推理小説賞レポート@台湾(1)

これから数回にわけて九月十九日に金車文藝中心で開催された第四回島田荘司推理小説賞授賞式典と、今回の訪台に関するレポートをまとめていきたいと思います。今回の受賞作は既報の通り、雷鈞の『黄』となりました。前回『見鬼的愛情』が入選しながら惜しくも受賞できなかった彼でしたが、今回は『黄』という傑作をひっさげて雪辱を果たしたといったところでしょうか。おめでとうございます。

さて授賞式の会場は前回と同様、台北市内にある金車文藝中心。二年前はいったいどこか会場の入口なのかと一階の珈琲ショップの前で立ち往生してしまったのですが、今回は没問題。しっかりとエレベーターを使って無事会場にたどり着くことができました。エレベータを出たところの受付で、男の子に「メディアの方は……」なんて妙な案内をされてしまったのですが、大きめのカメラバッグにSONYのα7を肩から提げ、片手にはDSC-RX1を持っていた恰好から、どうもマスコミの人と勘違いされてしまったようで……(苦笑)。

毎回、前半部では現代舞踏やマジックなど面白い演目を魅せてくれる式典ですが、今回はパントマイム。その内容はもちろん、入選した三作のモチーフがふんだんに活かされているものでした。冒頭、会場が暗くなると白塗りに黒いサングラスをかけたパフォーマーが登場し、ゆっくりと椅子に腰をおろす、――と、これは『黄』でしょう。

 
 
 
 

音楽とともに踊りも交えて盲人の演技を見せたあと、舞台の後ろに置かれていたフルフェイスのヘルメットをかぶるや踊り出す、――と、これは『熱層之密室』ですね。

 
 
 

それに続いてジャグリングを繰り出すその踊りと『H.A.』との関連が一瞬判らなかったのですが、恐らく手にしているいくつかの箱がコンピュータゲームのドットを表している様子。

     

ひとしきりの演技が終わると、最前列に座っていた御大を手招きしてなかば強引に舞台へと上げてしまうや、御大にもジャグリングを強制――と、これはかなり強引な展開でありました(このあと「今度は事前に練習させてくださいね」と御大がボヤいていたとかいなかったとか(爆))。

 
 
 
 
 

そして演目が終わると、金車文藝中心の袁執行長、皇冠の平雲社長からの挨拶、二次選考の講評と続き、御大の講評がありました。今回、受賞作を選ぶことは今まで一番難しかったとのことで、二作同時受賞は駄目だろうかと金車にも強くかけあったそうですが駄目だったと。二作までは選ぶことはできるのだがあと一作、というところで御大が相当に悩まれていたことは漏れ聞いていましたし、実際入選した三作を読んでみてもそれぞれまったく個性が異なる作風でかつ達成しているものが大きく異なるため、個人的には御大の懊悩にも大きく頷いてしまったわけですが、ともあれ前回と異なり、受賞作が一作に絞られたことは確実であることがここで明らかとなりました。

今回も式典の様子はネットで配信されていたようです。会場に来られなかった人のために『星籠の海』のジャケをあしらったボードにサインをする御大。
今回も式典の様子はネットで配信されていたようです。会場に来られなかった人のために『星籠の海』のジャケをあしらったボードにサインをする御大。

『今回は今までの中で一番難しかった』と講評を述べる御大。
『今回は今までの中で一番難しかった』と講評を述べる御大。

御大の話が終わり、いよいよ受賞作発表かと思いきや舞台はふいに暗転し、司会者である冬陽氏の携帯に電話がかかってきます。彼は舞台袖へそそくさと退場し電話に出るも、その会話の内容は会場に筒抜け。皆がいったい何事かと訝しんでいる暇もなく、舞台の向かって左側のスクリーンに映像が映し出されます。

会場では俳優の要望が『無名之女』の作者・林斯諺に似ている! と言われていました(爆)
会場では俳優の要望が『無名之女』の作者・林斯諺に似ている! と言われていました(爆)

インクに記された怪しげな暗号――
インクが記された怪しげな暗号――

眼鏡をした男が、幾重にも鉄鎖の巻かれたアタッシュケースを脇において何やら悩んでいる様子。そこには奇妙な暗号が記されてい、解読方法が判らず困り果てた彼は寵物先生に電話をして助けを乞う。寵物先生が華麗な推理眼でその数字列をアルファベットに置き換える解読法を提案。するとその文字列は台北市内にあるミステリ専門書店「偵探書屋 Murder Ink」を示しているらしい――。

訝しく思いながらも「偵探書屋 Murder Ink」へと赴き、そこからさらに暗号を解読して、……という流れから、すべての謎はこの会場である金車文藝中心にあるらしいことを彼は突き止めます。自転車を漕いで彼が向かう先は、――と、そのとき、会場に自転車のベルが鳴り響き、さきほど映像の中で自転車を漕いでいた彼が件のアタッシュケースを抱えて登場。

件の鞄を手にした人物が登場。虚実を超えたこの趣向はなかなか面白かったです。
件の鞄を手にした人物が登場。虚実を超えたこの趣向はなかなか面白かったです。

それは舞台のテーブルの上に置かれ、いよいよ鎖が外されると、なかから取り出されたのは巻物らしきもの――御大がそれを受け取ると、紐がほどかれる。そこに記されていたのは、……と、このあとは言うまでもないでしょう(爆)。

鎖が解かれると中から巻物が出てくる――。
鎖が解かれると中から巻物が出てくる――。

件の巻物を受け取る御大。
件の巻物を受け取る御大。

そこには「首奨到――」とう文字が読めます。
そこには「首奨到――」とう文字が読めます。

ということで受賞作が『黄』であることが発表されました。この瞬間、会場に詰めかけていた皆の視線はおしなべて舞台上の御大に注がれていた筈であるものの、自分が発表を待つ入選者の三人にカメラを向けていたことは言うまでもありません(苦笑)。

不安そうに、また祈るように息をつめて結果を待つ入選者三人。後ろに少しだけ島崎御大の姿が映っています。
不安そうに、また祈るように息をつめて結果を待つ入選者三人。後ろに少しだけ島崎御大の姿が映っています。

受賞作発表の瞬間。祝福する二人、そしてマスクをしたままポーカーフェイスを崩さない受賞者との対比がイイ(爆)。
受賞作発表の瞬間。祝福する二人、そしてマスクをしたままポーカーフェイスを崩さない受賞者との対比がイイ(爆)。

受賞者である雷鈞氏の言葉で印象に残ったのは、「中国においてこの賞は、中国人だと受賞できないと思われている。しかし自分が受賞したことで、そうした不信感は今後払拭されていくであろう」というような主旨の内容を述べていたことでした。さらに加えて「台湾人しか受賞できない」というようなことも話していたような気もするのですが、……そもそも第二回の受賞者は香港人だし、第三回の文善女史はカナダ。まったく誤解であることは明らかながら、やはり中国ミステリの闇は深い……と妙なところで戦慄してしまったのはナイショです(爆)。まあ、しかし、どうであれそうした不信感が払拭されるのは良いことですので、この時期に大陸の作家が受賞できたのは僥倖といえるかもしれません。

その後、舞台上には『H.A』の作者である薛西斯嬢、『熱層之密室』の提子墨氏、そして受賞作『黄』の雷鈞氏がともに壇上に上がりトロフィー授与となりました。

舞台上に上がる入選者三人。
舞台上に上がる入選者三人。

『熱層之密室』の作者・提子墨氏。トリックスターめいたその風貌とユーモア溢れるキャラは、作中の名探偵を彷彿とさせます。
『熱層之密室』の作者・提子墨氏。トリックスターめいたその風貌とユーモア溢れるキャラは、作中の名探偵を彷彿とさせます。

『H.A.』の作者・薛西斯嬢。いっさい顔を出さない謎めいた存在の彼女でしたが、その姿は……とても可愛かった(爆)。
『H.A.』の作者・薛西斯嬢。いっさい顔を出さない謎めいた存在の彼女でしたが、その姿は……とても可愛かった(爆)。

受賞者の雷鈞氏。
受賞者の雷鈞氏。

トロフィーを手にしての記念撮影。
トロフィーを手にしての記念撮影。

勝ちどきを上げているわけではありません(爆)。島田荘司推理小説賞では、入選を逃した一次選考通過者にもトロフィーが渡されます。今回式典に出席していたのは、『槴子花殺人事件』の顧日凡と、『詹典神探探案系列-「大亞集團命案」』の作者である耿偵詞女史の二人でした。
勝ちどきを上げているわけではありません(爆)。島田荘司推理小説賞では、入選を逃した一次選考通過者にもトロフィーが渡されます。今回式典に出席していたのは、『槴子花殺人事件』の顧日凡と、『詹典神探探案系列-「大亞集團命案」』の作者である耿偵詞女史の二人でした。

会場では寵物先生、陳浩基氏、胡傑氏、文善女史と歴代の受賞者が勢揃いし、講演のあとに行われたサイン会では今回の入選者三人のサイン会も行われたりと大盛況でした。このサイン会の様子は、講演の内容を紹介したあとで現場の写真も交えて紹介したいと思います。講演の内容はまだテープ起こしができていないので、後回しにして、……と。次回は台湾滞在一日目に御大の取材が行われたミステリ専門書店「偵探書屋 Murder Ink」の様子を紹介したいと思います。乞うご期待

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